これまで、鰻業界では成魚の9割以上がオスであるとされてきました。サイズが大きく脂ののりが絶妙なメスの鰻はめったに見られることがなく、専門家の間では「幻のうなぎ」と呼ばれるほどでした。そんな中、愛知県西尾市一色町の「三河一色めすうなぎ研究会」が世間を驚かせる革新的な研究成果を発表。独自の養殖技術により、メスのニホンウナギジャポニカ種の安定した育成に成功したのです。
これにより2024年に誕生したのが「三河一色産幻のめすうなぎ 艶鰻(えんまん)」。
メスのニホンウナギジャポニカ種の研究の背景には、稚魚であるシラスウナギの国内採捕量の危機的な落ち込みがありました。1963年には232トンあったものの、1980年代から低水準が続き、2023年はなんと40分の1未満の5.6トンにまで落ち込んでいます。
環境省は、2013年にニホンウナギジャポニカ種を絶滅危惧IB類としてレッドリストに掲載。 これは、近い将来における野生での絶滅の危険性が高い種であるという公式な見解です。
「このままではうなぎがとんでもなく高騰してしまう、それどころかめったに食べられない希少なものになってしまう」そんな危機感が業界内を覆っていました。
こうした課題を背景に、ウナギの養殖技術を研究する愛知県水産試験場は、熊本大学や北海道大学、共立製薬(東京・千代田)などと共同団体を創設。農林水産省が管轄する「イノベーション創出強化研究推進事業」(JPJ007097)に採択され、2018年、国家プロジェクトとして養殖鰻をメスに育てる研究がスタートしました。
採捕量の減少するシラスウナギを、大きくて脂ののったメスに育てられれば、より多くの人に美味しい鰻が届けられ、天然資源の有効活用につながるのではないか――。そんな熱い思いを胸に、気の遠くなるような努力が続きます。
それから6年。ついに養殖のニホンウナギジャポニカ種の9割をメスに育てることに成功。その秘密はエサにありました。女性ホルモンと似た構造を持つ「大豆イソフラボン」を一定の割合でエサに入れるとオスとメスの比率が逆転し、9割がメスになるという性質が発見されたのです。
この画期的な技術により、満を持して世に送り出された「三河一色産幻のめすうなぎ 艶鰻」。
その特徴は、ふんわりと柔らかな身、際立つ脂の旨み、香ばしくて柔らかな皮、うまみ成分であるグルタミン酸は従来の鰻の1.5倍にものぼります。
口に入れた瞬間、まるで絹のようなしっとりとした質感、とろけるような柔らかさが広がります。その食感は、従来のオス鰻では味わえない、まさに夢のような体験となるでしょう。食べた人の実に85%が「三河一色産幻のめすうなぎ艶鰻の方が好き」と答える、名実ともに最高傑作に仕上がりました。
また、メスのニホンウナギジャポニカ種の育成に特化した養殖技術は、著名なうなぎ評論家が“ノーベル賞級”と絶賛する大発見となりました。
この新技術を用いて、各地でメス鰻の養殖に取り組む動きが生まれています。「浜名湖うなぎでしこ」もそのひとつ。
メス鰻の品質に着眼した浜名湖養魚漁業協同組合では、三河一色で研究が始まった2018年の3年後となる2021年よりメスの鰻の養殖にむけた取り組みをスタート。現在は「三河一色産幻のめすうなぎ艶鰻」に使われた特許技術(登録第6970992号)※を取得し、ニホンウナギジャポニカ種をメスに育てるための養殖が行われています。これにより、浜名湖うなぎの最上級ブランドとして2024年に「浜名湖うなぎでしこ」が発表されました。
メスのニホンウナギジャポニカ種というワンランク上の価値観の扉を開いた「三河一色産幻のめすうなぎ 艶鰻」。
その稀少性と卓越した品質から、愛好家の間で絶大な支持と注目を集めています。一口食べれば、なぜこのうなぎが「幻」と呼ばれていたのか、その理由が舌の上で明らかになることでしょう。
※特許技術(登録第6970992号)に記載される用法、用量を守り、メスになることを目指して生産されたウナギであることを証明いたします。